住宅ローンの借り換えとは、既に契約している住宅ローンを別の住宅ローンに変更することを指します。
この借り換えは、金利を低く設定することで、総支払額を軽減するなどのメリットがあります。
しかし、借り換えをする際にはさまざまな問題が生じる可能性があるため、注意が必要です。
住宅ローン借り換えとは
住宅ローンの借り換えは、既に契約している住宅ローンを別の住宅ローンに変更することを指します。
借り換えを検討する際は、元のローンの残りの金額や返済期間だけでなく、新しいローンにかかる費用なども考慮する必要があります。
したがって、通常は候補となる金融機関に試算を依頼し、メリットがあると判断した場合に事前審査を申し込むのが一般的です。
一部の金融機関では、利息を引き下げたいと相談すると、条件を改めてもらえる場合もあります。
ただし、金利にばかり注目することには注意が必要です。
住宅ローンの借り換えには、誰もが陥りがちな失敗例がいくつかあります。
したがって、事前に注意点を理解し、問題を回避するために対策することが必要です。
住宅ローン利用者が抱く借換時の不安
住宅ローンの借り換えを検討する人々の中には、知識が不足しているために借り換えを躊躇している方が多いことが、アルヒ株式会社によるアンケート調査で明らかになりました(※参照)。
この調査では、多くの人が「知識や情報が少なくて不安だから借り換えをためらっている」とか「借り換えに関する手続きが面倒だと感じる」といった声が寄せられています。
これは、借り換えを考える際に必要な情報や手続きについての知識不足がハードルとなっていることを示しています。
金利選択を誤った
住宅ローンの借り換えをすることで、返済額を減らし、総支払額を削減することができるメリットがあります。
ただし、借り換えをすることで逆に損をしてしまうケースもあります。
その一つは、金利の選択によるものです。
住宅ローンの借り換えをすると、新たに選択する金利によって月々の返済額が変わります。
固定型から変動型に借り換えた
よくある失敗の例としては、借り換えの際に全期間固定型や固定期間選択型の金利から変動型の金利に変更したケースがあります。
この場合、初めの金利が低かったとしても、後に金利が上昇すると支払い総額が大きくなってしまいます。
例えば、住宅ローンの全期間固定型から借り換えて変動型を選択する場合、金利が上がると金利負担も増えてしまう可能性があります。
したがって、変動型を選択する場合でも、金利が上がっても借り換えの効果を得られるかどうかを確認する必要があります。
手数料の比較検討を誤った
住宅ローンの借り換えを行う際には、特定の金融機関と契約することになりますが、その金額や期間、金利などによって、諸経費にかかる具体的な金額は異なります。
一般的には、およそ30万円から80万円の範囲であると言われています。
借り換えをする前には、借り換え元のローン残高を全額返済する場合の手数料や、抵当権を抹消するための費用などがかかります。
一方、借り換え後には、新たな住宅ローンの融資手数料や印紙税、登記費用、ローン保証料などの諸経費が発生します。
これらの諸経費は、借り換え後の住宅ローンに含めることも可能です。
ただし、借り換えに伴う返済額から諸費用を差し引いた場合に、それでも借り換えのメリットがあるかどうかを慎重に検討することが重要です。
また、借り換えの場合でも審査が行われるため、手続きに必要な時間を確保することも必要となります。
審査基準の確認不足による誤り
多くの方々が借り換えを検討する際に心配しているのは、もし審査に落ちたらどうなるかということです。
以前に住宅ローンの審査に通ったからといって、借り換えの審査に通るとは限りません。
例えば、離婚などの理由で借り換えを検討する場合には、以前と同じように安定した収入があることを証明する必要があります。
住宅ローンの審査で重要なのは、年収に対する年間の返済額の割合を表す「返済負担率」です。
もし年収が減ったり、新たに車のローンやキャッシングローンを抱えたりすると、返済負担率が基準を上回ってしまい、借り換えが難しくなる場合があります。
また、借り換えを検討する際には、体調に変化があることも考慮されます。
通常、住宅ローンの契約では「団体信用生命保険(団信)」への加入が義務付けられています。
しかし、借り換え時に健康状態が悪化していると、団信に加入できない可能性があります。
その結果、審査に通らなくなってしまうかもしれません。
さらに、住宅ローンの引き落としに関する問題や、クレジットカードの支払いの延滞などによって信用情報が悪化している場合も、借り換えの審査に影響を及ぼすかもしれません。
借り換えの失敗を避けるためには、事前に住宅ローンの審査基準を確認しておくことが重要です。
持ち家の担保価値の低下による誤り
住宅ローンの借り換えをする際には、不動産の担保価値に注意が必要です。
新築物件を購入する場合、一般的には収入や勤続年数などの人的評価が重要視され、不動産価値よりも注目される傾向があります。
しかし、借り換えの場合は中古物件を対象とすることが多く、そのためには「住宅の不動産価値」が「住宅ローンの残高」と同等または上回っていることが求められます。
これが借り換えの条件となります。
ただし、物件の価値は単に居住年数だけで判断されるわけではありません。
例えば、10年前に徒歩15分の場所にある駐車場付きの戸建て住宅を購入したとします。
しかし、今現在駅から徒歩10分の場所には10年前にはなかったタワーマンションなどが建設されているかもしれません。
この場合、所有している戸建て住宅の不動産価値は低いと判断され、借り換えによる借入額も少なくなってしまう可能性があります。
したがって、住宅ローンを借りる際には、物件審査によって融資額の上限に影響が出ることに注意が必要です。
また、住宅ローンを新規で契約する際には、金融機関のほとんどが「売買代金」や「工事請負契約金額」の100%を融資の上限としています。
しかし、新築物件であったとしても、たった1日でも経過すると、売却価格は購入時の2~3割程度にしかなりません。
不動産は金融機関にとって重要な担保となるためです。
さらに、長期にわたって借り入れている場合には、物件の価値だけでなく、将来的な取り壊しや改築にかかる費用も考慮して融資額が決定されることもあるでしょう。
一部の金融機関では、住宅ローンの借り換えに限り、担保価値の200%まで融資可能とする場合もあります。
しかし、居住年数が長い場合は特に、事前に物件の担保価値について調査しておくことが重要です。
借り換えが成功しやすい条件
住宅ローンの借り換えを検討している場合、成功するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。
以下の条件を確認してみましょう。
借り換え前後の金利差が1%以上
まず、借り換えをするためには、金利が1%以上下がる必要があります。
ただし、借入期間や借入金額によっては、0.5%下がるだけでも大きな利息削減の効果があることがあります。
したがって、借り換えを検討する際には、借り換え後の金利がどれだけの利息負担削減になるのかをシミュレーションしてみることが重要です。
そして最終的には、自分に合った金融機関で借り換えをするようにしましょう。
ただし、シミュレーションの際には、借り換えに伴う諸費用も含めて計算することを忘れないでください。
諸費用の金額は金融機関によって異なるため、思ったよりも利息負担が減らない可能性もあります。
住宅ローン借入残高が1000万円以上
借り換えを行うと、借入残高が多いほど得られるメリットが増えると言われています。
これは、借り換えすると新たに金融機関との契約が必要になり、住宅ローンの諸費用が発生するためです。
諸費用には、事務手数料や保証料などのさまざまな項目が含まれており、これらの費用は100万円近くになることもあります。
ですので、借入残高が1000万円以下の場合、諸費用の額が借り手にとっての負担となり、結果的に借り換えるメリットが少なくなってしまう可能性があります。
返済期間が10年以上
借り換えによる金利差の効果は、返済期間が残っている間長いほど大きくなります。
特に住宅ローンの返済方法で一般的に選ばれる元利均等返済では、返済期間が短くなるほど返済額に占める元本の割合が増加します。
つまり、元本が多くなる方向に返済が進むため、金利の低い金融機関に借り換えても利息の削減効果は予想以上に得られない可能性があります。
実際には、借り換えにかかるさまざまな諸費用が発生するため、現在の住宅ローン契約のまま返済を続ける方が得策なケースもあります。
まとめ
住宅ローンの借り換えを成功させるためには、以下のポイントに注意しておきましょう。
1. 借り換えによって諸費用を含めた利息負担が減るかどうかを確認しましょう。
借り換え後のローンの金利や返済期間を考慮して、将来的にどれだけの利息負担が減るか計算してみることが重要です。
2. 借り換え後に金利が上がるリスクに対する対策を講じているか確認しましょう。
例えば、変動金利ローンから固定金利ローンへの切り替えや、金利上昇時の追加の返済方法などが考えられます。
3. 借り換えの申込者自身の属性や信用情報に問題がないか確認しましょう。
過去の返済履歴や信用情報などが借り換えの審査に影響を与えることがありますので、予め自分の信用状況を確認しておくことが重要です。
4. 健康状態に問題がないことも注意が必要です。
特に長期のローン契約を考える場合、健康状態によっては返済負担ができなくなるリスクがあります。
医療保険や生命保険などを事前に検討し、返済に影響を与えないように対策を考えましょう。