「親と同居して、将来の老後のケアをしたい」という方や、「子どもの家族と一緒に暮らすために2世帯住宅を購入したい」という方に適した「親子リレーローン」について、詳しく説明します。
親子リレーローン
親子リレーローンは、親族同士で同居するために利用される住宅ローンの一種です。
この仕組みでは、親と子が連携して住宅ローンを組み、2世代にわたって返済していきます。
通常、中年以上の親が子供と共同で融資を受け、最初は親が返済を行います。
そして、親が定年退職などで返済が困難になった時点で、子供が返済の責任を引き継ぐことになります。
この親子リレーローンは、新築購入時だけでなく、リフォームや住み替え、借り換えなどの場合にも利用することができます。
住宅ローンは、一般的には「80歳までに完済すること」が条件となっています。
そのため、高齢者の場合は長期のローンを組むことができません。
しかし、親子リレーローンを利用することで、この問題を解決することができます。
また、収入が少なくて単独では住宅ローンを組むことができない場合でも、親子リレーローンを利用することで住宅購入が可能になります。
親子リレーローンの審査基準については公表されていませんが、一般的な住宅ローンと基本的には同じ審査項目が適用されます。
通常の住宅ローンの審査では、借り手の返済能力が検討されますが、親子リレーローンでは特に子供の経済状況や返済能力が重要視されます。
これは、子供が将来的に親のローンを完済するための連帯債務者となるからです。
そのため、親だけでなく子供の他の借り入れや滞納の履歴が審査に影響する場合もあるため、注意が必要です。
利用上の要件
同居中もしくは将来、同居を予定している親子であることは、親子が同じ家に住んでいるか、将来的に一緒に住む予定があることを指します。
借り入れ時には、親の年齢が70歳未満である必要があります。
また、最終的な返済期限の時点で子供の年齢が80歳未満である必要もあります。
返済を引き継ぐ子供は1人でなければなりません。
親子ともに安定した収入があることも要件の一つです。
さらに、子供は団体信用生命保険に加入する必要があります。
これらの要件を満たせば、親の年齢が70歳以上でも、一部の金融機関からローン融資を受けることが可能です。
ただし、同居の要件については金融機関ごとに異なるため、フラット35では、親子リレーの後継者として該当する要件を満たせば良いことになっています。
申込者本人の子供(または孫などの直系の子供)、またはその配偶者で定期的な収入が必要です。
申込時の年齢は70歳未満である必要があります。
連帯債務者でもある必要があります。
同居を要件としない金融機関もあることも覚えておくべきです。
また、親子リレーローンの特徴として、団体信用生命保険に子供のみが加入することが挙げられます。
この保険は、債務者が死亡や重度の身体障害などで返済が不可能になった場合に、保険会社が住宅ローンの残りを全額保障するものです。
親子リレーローンでは、親である主債務者に何らかの事情が生じた場合に、子供である連帯債務者がローンを引き継ぐ契約となっているため、そうした特徴があります。
親子リレーローンを利用するメリット
ここでは親子リレーローンを利用するメリットを見ていきましょう。
親が高齢でも住宅ローンを組みやすい
一般的に、金融機関では住宅ローンの条件として、借り手の年齢に制限を設けています。
完済時の年齢制限は通常80歳です。
この制限に準じると、高齢の方は月々の返済額が多額になる場合、完済時の年齢制限を満たせない可能性もあります。
しかし、親子リレーローンを利用することで、後継者である子どもの年齢を基準に返済期間を設定できます。
この方法を利用すると、高齢の方でも家のローンを組むことができます。
また、長期間のローンであれば、月々の返済額を抑えることができます。
つまり、返済の負担が軽減されるということです。
親と子の収入を合算できる
親子リレーローンを利用して2世帯住宅を建てる場合、通常の戸建てと比較すると、床面積が広くなることがあります。
そのため、建築費用も高くなる可能性があります。
しかし、親子リレーローンを利用することで、親と子の収入を合算して申し込むことができるため、最終的な借入可能額が増えるというメリットがあります。
通常の戸建てと比べて、延べ床面積が多い2世帯住宅を建てるためには、より多くの費用が必要です。
ところが、親子リレーローンを利用することで、親子の収入を合算して借入額を算出することができるため、最終的に借りることができる金額が増えるというメリットがあります。
この親子リレーローンを利用することで、親と子の収入を合算した額でローンの申し込みを行うことができます。
そのため、普通のローンよりも借り入れ可能額が大きくなります。
そして、これにより、2世帯住宅を建てるために必要な費用もカバーすることができます。
親子リレーローンを利用することで、2世帯住宅建築に必要な建築費用をカバーすることができます。
通常のローンでは借り入れ可能額が限られている場合でも、親子の収入を合算することで借り入れ額を増やすことができます。
よって、親子リレーローンは、2世帯住宅建設において費用面でのメリットがあると言えます。
年金収入のみでも利用できる
住宅ローンを申し込む際には、非常に重要な条件があります。
それは「安定かつ継続的な収入を得ていること」ということです。
つまり、金融機関は、ローンを返済するために安定した収入があることを求めているわけです。
しかしながら、一部の金融機関では、年金収入だけでは収入が安定しているとはみなされず、住宅ローンの申し込みができない場合もあります。
このような場合に、親子リレーローンは非常に便利です。
なぜなら、この制度では年金収入も正式に収入として認められるからです。
したがって、年金収入を持つ方でも、より簡単に住宅ローンを利用することができるのです。
親子リレーローンは、家族の支えとなり、安心して住宅ローンを申し込むことができる素晴らしい制度なのです。
親と子それぞれに住宅ローン控除が適用される
親子リレーローンは、親子間で住宅ローンを分けることで、親と子の双方が住宅ローン控除を受けることができる制度です。
この制度を利用するためには、住宅ローン控除の適用要件を満たす必要がありますが、要件を満たすならば、親と子の両方が住宅ローン控除を利用することにより、税金を節税する効果が期待できます。
具体的には、住宅ローンの利息や元本返済に係る金額が住宅ローン控除の範囲内にある場合、その金額を所得から差し引いた額が課税所得となります。
その結果、所得税の計算において支払う税金が軽減されることになります。
親子リレーローンを利用することで、親と子が双方とも住宅ローン控除を受けることができるため、税金負担を軽減することができます。
親子リレーローンを利用するデメリット
次に親子リレーローンを利用するデメリットを見ていきましょう。
子どもが別の住宅ローンを組めなくなる
親子リレーローンは、親と子どもが一緒にローンを組んで借り入れをする制度です。
この制度では、子どもが親の連帯債務者となります。
つまり、親が返済に困難が生じた場合、子どもは親の代わりに返済する義務が生じます。
そのため、子どもは自分自身で住宅ローンを組む際に、返済能力の評価が困難になる場合があります。
例えば、子どもが転勤などで別の場所に家を買う場合、親の連帯債務という負債があるため、新たな住宅ローンを組むことができない可能性があるのです。
贈与や相続に関するトラブルが発生しやすい
親子リレーローンを利用して家の返済をする場合、返済額は住宅の持ち分に基づいて決まります。
したがって、親子リレーローンを利用しているにもかかわらず、不動産の名義を子供だけにしてしまうと、親から子供への「みなし贈与」と見なされる可能性があります。
また、購入する物件は相続財産となるため、将来的に相続が発生した際に相続人間で問題が生じないよう、事前に被相続人と相続人たちで話し合っておく必要があります。
複数の相続人がいる場合には、不動産以外の相続財産を確保するなどの対策を事前に取っておくことがおすすめです。
子どもの同居が難しくなったときに親の負担が増える
親子リレーローンは、親と子が共同で住むことが要件とされています。
ただし、子どもがまだ結婚していない場合、結婚後に配偶者が同居を嫌がり別居する可能性もあります。
逆に、子どもが別居したい場合でも、親子リレーローンを組んでいるために別居することができないという問題も考えられます。
親子リレーローンを利用している限り、親は子どもが別居していても住宅ローンの返済を継続しなければなりません。
親子リレーローンを検討する場合は、将来にわたって同居が確実であることを事前によく確認する必要があります。
親子ペアローンという選択肢もあり
親子ペアローンは、家族同士が協力し合って金融機関から住宅ローンを借りる仕組みです。
通常、一人で個別に住宅ローンを組む際には、その個人の返済能力だけが考慮されます。
しかし、親子ペアローンを利用することで、親と子が協力し合ってより多額の融資を受けることができます。
親子リレーローンが向いているケース
もし親が年金生活を送っていたり、低収入の仕事に従事している場合でも、相当な資産がある場合でも、それだけでは住宅ローンを組む際に不利になることがあります。
このようなケースでは、親子リレーローンを利用することが有益であることが言えます。
具体的には、十分な安定収入のある子供が住宅ローンの返済を引き継ぐことによって、親の信用を補強することができるのです。
このような手段を取ることで、住宅ローンを組む際に有利な条件を得ることができます。
親子ペアローンが向いているケース
たとえば、2つの家族が同じ住居に住む2世帯住宅を考えている場合には、双方の希望に合った広い住宅が必要です。
このような場合、親子双方が大きな住宅を希望しているため、このローンは適しています。
また、親からの経済的な協力も受けられるため、通常の金融機関では断られてしまうかもしれない融資額でもクリアすることができるでしょう。
親子ペアローンを利用する際の注意点
親子ペアローンを利用する際に留意すべき点は、親と子供の両方がローン契約を結ぶため、契約に伴う手数料などの費用が両方にかかるということです。
また、大きな融資を受けられるからといって無謀な借り入れは避けるべきです。
思いがけない収入減や経済的な困難に直面した場合、返済が困難になるリスクがあるため、慎重に検討する必要があります。
不動産の登記名義変更には、売買や相続、贈与などの理由が必要です。
たとえば、親子リレーローンや親子ペアローンの残債のローン割合を親の存命中に変更する場合でも、親と子の間での贈与と見なされることがあります。
例えば、親が住宅ローンの支払いを肩代わりし、不動産の所有権を子供の名義に変更する場合でも、親が代金を肩代わりした部分は、親から子への贈与と見なされます。
このような場合、贈与税を回避するためには、親が肩代わりした金額に相当する所有権を子供から親に移転するための不動産登記が必要となります。
このようなケースについては、金融機関などと十分に相談し、適切な対応を判断することをおすすめします。
返済途中で親が亡くなった場合の残債の扱われ方の違い
ここでは、返済途中で親が亡くなった場合の残債の扱われ方の違いを見ていきましょう。
親子リレーローンの場合
以前お話しましたように、通常、親がすべての返済責任を負う子供が団体信用生命保険に加入することが一般的です。
つまり、もし親が返済を完了する前に亡くなった場合、子供が未払いの債務を引き受けなければなりません。
親子ペアローンの場合
一般的には、親子の両方が団体信用生命保険に加入することが一般的です。
これによって、もしも親が住宅ローンの返済期間中に亡くなった場合でも、親の住宅ローンの残債は保険金によって相殺され、ゼロになります。
ただし、子供の住宅ローンは別の契約であり、返済は継続されます。
つまり、親の死亡によって親の住宅ローンは完全に清算されますが、子供の住宅ローンはまだ残っているため、子供は引き続き返済を続ける必要があります。
返済が難しくなった場合の解決策
ここでは返済が難しくなった場合の解決策を見ていきましょう。
住宅ローンの残債より家の売却金額が大きい場合
親子リレーローンでは、親が急に亡くなってしまい、子供が親の支払いと自分の支払いを含めたローンの残債に苦しむ場合、解決策として家の売却を検討することが考えられます。
まずは、家の売却額がローンの残債を相殺できるかどうか調べることが重要です。
もし、家を売却することで住宅ローンの残債以上の金額を得ることができるようであれば、売却手続きを進め、そこから得たお金でローンを完済することができます。
このように家の売却を選択することで、子供は残ったローンの負担から解放されることができます。
しかし、家を売却することで得られる額がローンの残債を下回ってしまう場合、別の解決策を模索する必要があります。
この場合、他の財産や資産を活用する、追加の収入源を見つける、または家族や友人からの支援を受けるなど、多角的なアプローチが必要です。
また、金融機関との交渉や法的なアドバイスも受けることが適切です。
以上のような対策を講じることで、親子リレーローンの残債問題を解決することができるでしょう。
住宅ローンの残債より家の売却金額が小さい場合
もし家を売っても借金が多い場合には、以下の方法を検討することが重要です。
まず、借金をしている金融機関に相談し、返済計画を変更するための条件交渉を行うことです。
これは初めに難しいかもしれませんが、金融機関も返済が滞って不良債権になることは望んでいません。
金融機関は、返済計画を変更することで、債務者とともに問題解決に向け協力することを目指しています。
そのため、返済スケジュールの変更や金利の再計算など、債務者が払いやすい条件の設定改変が可能です。
ただし、これにはいくつかの条件があります。
例えば、借金の返済能力や収入状況に基づいて改変を許可されることが一般的です。
もし金融機関との交渉がうまくいかない場合には、専門家や弁護士の助言を受けることも検討してください。
彼らは借金問題を解決するために適切なアドバイスをしてくれます。
全体的に言えることは、負債の多い場合でも諦めずに、金融機関や専門家と協力して解決策を探ることが大切です。
まとめ|相続人が複数いる場合のトラブル回避方法
親子リレーローンは、親と子が一緒に住宅ローンを組む方法です。
この場合、基本的には子が将来その家を相続することになります。
しかし、実際に相続が行われる際には、子に兄弟がいる場合が考えられます。
そして、子に兄弟がいる場合、住宅以外の財産が少ない状況であると、相続する財産の金額には大きな差が生じる可能性があります。
これが、兄弟間でのトラブルを引き起こす可能性もあるのです。
また、例えば、子がローンを完済している場合でも、名義は親と子で50%ずつとしていた場合、税制上では相続財産は親の名義分となるのです。
このような場合、相続人同士の争いが発生する可能性もあります。
そこで、このような事態を避けるためにも、親子リレーローンを利用する際には、将来誰がどの資産を相続するのかを他の相続人にも事前に認識してもらうことが非常に重要です。
これによって、相続時におけるトラブルを予防することができます。